Amercian Accent Training 本
アメリカアクセントの英語を身につける!
この記事では、前回ご紹介した導入部分と本の概要に続き、『American Accent Training』の1章と2章で学べる大事なポイントを解説します。
Chapter 1
アメリカ英語の口の動かし方 - What to Do with Your Mouth to Sound American
アメリカ英語の特徴は、唇をあまり動かさずに、主に舌を使って喉から音を発声することです。アメリカ人は一つ一つの音を丁寧に発音することよりも、むしろスムーズに音を繋げることを重視しています。
もしアメリカ英語を音楽に例えるなら、それはジャズに似ています。アメリカ人の英語には、まるでジャズのメロディのようなリズムとスイング感が存在します。例えば、「Betty bought a bit of better butter.」という文章を、チェロの音色をイメージして発音すると、ネイティブに近い音を出せるとこの本では説明しています。
この文章をよく聞いてみると、「ドゥーダ、ドゥーダ、ドゥーダ、ドゥーダ、ドゥーダ」というように、ジャズのスイングリズムに似た感じがします。長い音と短い音が繰り返されるこのリズムは、まさにジャズを演奏する際に音符の長さを楽譜通りにはせず、体で感じるスイング感を取り入れることに通じています。スペル通りに発音しないアメリカ英語のイントネーションは、こうしたリズム感が影響しているのです。
アメリカ英語のイントネーションの重要性
アメリカのイントネーションは、音のつながりと発音の仕方に大きな影響を及ぼしています。イントネーションは、話し手の気分や言葉の意味を示唆する重要な要素でもあります。
なぜイントネーションが重要なのでしょうか?アメリカ英語特有のイントネーションを使うことで、自信があり、生き生きとした、より説得力のある話し方が可能になります。このイントネーション、もしくは「話し言葉の持つ音楽」は、たとえ内容が聞き取れなくても、話し手がどの国の人であるかを示すほどの力を持っています。
一方、イントネーションのない平坦な話し方は、機械的で冷たい印象を与えがちです。聞き手を混乱させ、メッセージが十分に伝わらないことにもつながります。本書では、いくつかの言語のアクセントを例に取り、異なるイントネーションが与える印象を説明しています。たとえば、日本語のアクセントは、音がぶつぶつと途切れ、機械的で感情のない冷たい印象を与えることがあると指摘しています。
アメリカンイントネーションですべき事、すべきでない事
単語単語で区切らない
音のグループでつなげる
階段式のイントネーションを使う
単語単語で区切らない
アメリカ英語のイントネーションで大切なのは、単語を個別に区切らずに、「音のグループ」としてつなげることです。これが最も難しい部分かもしれません。音のグループを意識することで、文章全体が滑らかに流れ、まるでピーナッツバターのように(ねっとりと)つながる感覚が生まれます。
階段式のイントネーションを使う
アメリカ英語のイントネーションの特徴は、音が階段を降りていくように変化する「階段式のイントネーション」です。このイントネーションを使うことで、自信のある、より自然な話し方が実現できます。
音のグループが川に流されて下へ降って行くような感覚がこのイントネーションの本質です。言葉が階段を跳ねながら降りていくイメージを持ちましょう。時々、落ちていく音がジャンプして高いレベルに昇ることがありますが、またすぐに落ちていきます。特に、アメリカ人は母音を伸ばす傾向があるため、違和感を感じるかもしれません。その場合は、一つの音で階段を二段分降りるように伸ばしてみるとよいでしょう。
例えば、「no」という単語が日本語やスペイン語訛りで発音されると短く切れてしまい、機械的で冷たい印象を与えます。アメリカンイントネーションでは、アクセントストレスのある母音を少し長めに引き伸ばすことが重要です。
イントネーションの作り方
イントネーションはどのように作られるのでしょうか?階段を降りていく音が時々高い場所に登る際には、次の3つの方法で強勢をつけることができます。
音量を上げる
注意を引きたい部分で音量を上げることで、強調する単語を際立たせます。音を伸ばす
重要な単語やフレーズを意味ありげに引き伸ばすことで、リズムに変化を加え、聞き手の注意を引くことができます。音程を変える
最も洗練された方法は音程を変えることです。これにより、聞き手に期待感を抱かせることができ、話に引き込む効果があります。
このように、アメリカンイントネーションでは、言葉の流れやリズム、音程の変化を駆使することで、より自然で説得力のある話し方が可能になります。これらのポイントを意識しながら練習することで、よりネイティブに近いイントネーションを身につけましょう。
ゴムバンドで感じる「伸びたり縮んだり」のリズム
エクササイズ1では、ゴムバンドを使って強勢をつける練習方法が紹介されています。ピッチを上げると同時にゴムバンドを伸ばしながら音読することで、リズム感を体で覚えることができます。
このゴムバンドの練習法は、英語特有のジャズ風リズム感覚をつかむのに最適です。英語には「伸びたり縮んだり」の感覚があり、これはジャズの音符がスイングするように、長い音と短い音が繰り返すリズムに似ています。
特に、英語に関して多くの知識を持っている人がアクセントトレーニングを始めると、先入観や誤解が正確に音を聞く妨げになることがあります。この「伸びたり縮んだり」のリズムを意識し、耳を訓練することが重要です。
縮小された音: 英語の「谷」
縮小された音とは、唇、舌、あごなどをほとんど動かさずに作る音です。これらの音は、英語のイントネーションを作る上で非常に重要な役割を果たしています。アメリカ英語において、これらの音は「縮小された音」として現れ、まるで英語病の「症状」のようです。
私はこの「縮小された音は谷に落ちる」という表現に強く共鳴しました。普段から私が発音コーチングで最も重視しているコンセプトの一つです。英語の波を体で感じることができるように訓練することが目標であり、私のポッドキャストの名前"English Wave"もこのアイデアから生まれました。
アメリカンイントネーションは、お山と谷で構成されています。お山を際立たせるためには、深い谷が必要です。そして、その谷には縮小された母音、特にschwaというあいまい母音が存在します。この谷があることで、イントネーションの変化がより際立ち、自然なリズムを作り出すことができます。
スペリングは当てにならない
英語の発音を正しく習得するには、スペリングよりも音節の位置が重要です。例えば、"photograph" と "photography" の発音の違いです。スペリングは似ていますが、発音は大きく変わります。
Photograph は FOW-duh-graf と発音し、最初の o をはっきり発音し(O長母音)、2番目の o は縮小します。Tの発音もはっきりしない音になります。
Photography は fuh-TAH-gr-fee と発音し、最初の o と a を縮小しますが、2番目の o ははっきりと発音します。(O短母音)
このように、英語の発音は強勢とイントネーションが支配しています。発音を改善するためには、スペリングに囚われず、耳で実際の音を正確に聞き取ることが大切です。アクセントストレスの位置を知ることは、そのためのロードマップとなるでしょう。
リズムの山あり谷あり
英語のリズムは、お山と谷で構成されています。
お山の上の音節には強勢ストレスがあり、通常の発音が保たれます。
谷に落ちている音節は弱く、音が縮小されます。特定の母音は、最も弱い音である schwa に変わることもありますし、単に勢いが弱くなるだけの場合もあります。
このリズムを習得するためには、まずは大げさにお山を高く、谷を低くして発音練習することが効果的です。特に短くて地味な単語(冠詞、前置詞、代名詞、接続詞、関係代名詞、助動詞など)は、ほとんど発音されずにさらっと流れることが多いです。
イントネーションによっては、母音が完全に消えてしまうこともあります。強勢がある場合は元々の音が保たれますが、強勢がない場合には schwa に変わることがあります。先ほどの photograph と photography の例でこの変化がわかります。
Exercise 1-52 から 1-56 では、a, an, to, at, it などの短い機能語をどのように発音するかを学べます。これらの単語を縮小した音で練習することで、英会話がよりスムーズになります。この部分の練習をしっかり定着させましょう!
Chapter 2
音のつながり、Word Connections
アメリカ英語の音のつながり
アメリカ英語では、単語と単語を個別に捉えるのではなく、つなげて発音するのが特徴です。この音のつながりをスムーズにするための「接着剤」として機能する音、つまり根底に流れるハミングのような音や低い振動のような連続音が存在します。これにより、句読点があっても音の流れが止まらないことがあります。
音と空気のつながり
日本語では、音をつなげずに音節ごとに区切って話すことが一般的です。そのため、アメリカ英語特有の連続音のような音のつながりが、日本人にとって欠けがちな要素となっています。この音のつながりは、息の使い方に大きく依存していると考えられます。口腔内に空気圧を常に保ちながら、息を吐く量を上手に調節して音を作る練習をすることで、音をつなげて話すことが可能になります。
イントネーションと音のつながり
第1章でイントネーションの作り方を学んだ後は、音をつなげて文章を一つの長い単語のように発音する練習を行います。単語を個別の単位として考えず、音のグループを一つの単位として捉えることがポイントです。
音をつなげる練習エクササイズ
この章のエクササイズでは、音のつなげ方に関する詳細やテクニックを紹介しています。大きく分けて4つのルールがあり、いろいろなリエゾン(音の連結)の種類が理解できるようになっています。
私の発音イントネーションコーチングでは、この本の順番とは逆で、まず息づかいを意識して母音や子音を正確に発音する練習を行い、その後でイントネーションとリズム感をつける練習に取り組んでいます。
息づかいと音のつながり
息の使い方によって、音のつながりは大きく変わります。テクニックも重要ですが、基本は息づかいです。息を止めずに吐きながら発音する新しい癖を身につけることが重要です。これは簡単ではありませんが、まずは息づかいを徹底的に練習することをお勧めします。
その後、この章のエクササイズを行うとより効果的です。エクササイズ2-15 などをしっかりと定着させれば、すぐに英会話に活用できます。反復練習と実践が鍵です。
音の種類で変わるリンキング
リンキング(音のつながり方)は、音が有声音か無声音かによって大きく異なります。無声音は空気を使った音であり、有声音に比べると発音にエネルギーを要します。そのため、無声音の代わりに有声音を使うことで、よりスムーズな音のつながりを作ることが可能です。
例えば、「t」の音が「d」 に変わることがあります。弱い「d」の音は「t」よりもリラックスした音であり、リンキングにおいて使いやすい音です。有声音はリラックスした音で、無声音に比べてエネルギー消耗が少なく、効率的です。
to の発音とエネルギー節約
特に前置詞の「to」を発音する際、「duh」や「d’」 と発音することでエネルギーを節約することができます。この「to」という単語は日常的に非常に頻繁に使用されるため、小さな音の違いであっても、これだけで多くのエネルギーが節約できます。
Chapter 3
3つの母音、Cat? Caught? Cut?
3つの母音の違い
第3章では、日本語話者に限らず、多くのノンネイティブ英語話者が混同しやすい3つの母音 (a, o, u) について説明しています。これらの母音の違いをしっかりと理解し、練習することが正確な発音のために必須です。
*この本では、cot と caught のO短母音とaw母音を同じ音として扱っています。(cot caught merger)
Schwaとu の音
この本では、「under」の「u」の音とschwaの「uh」 を同じ音として扱っています。これらは喉の同じ部分を使って出す似たような音ですが、schwaは特別な「縮小された」音であり、非常に勢いが弱まった音です。この点をしっかりと理解しておくことが重要です。(schwaについて詳しく知りたい場合は、別途参考資料を参照してください。)
歯を食いしばって発音練習
Exercise 3-6 では、歯を食いしばって文章を音読する方法が紹介されています。これは効果的な練習方法で、特に「a」や「o」の音が大きくあごを下げる必要があるのに対し、「u」の音はあごや唇を動かさずに舌と喉を使って発音する必要があるからです。このエクササイズを通じて、発音の精度を高めることができます。
発音コーチの感想
この本を読んでみたところ、私が発音コーチングで使用しているコンセプトが見事に言語化されていて、感動を覚えました。この本を通じて、ますます発音オタクの世界にのめり込み、さらに研究を深めたいという気持ちが強くなりました。人間の発する言語と音声の奥深さを再認識させられる一冊です。
アメリカには、この本の著者のようなアクセントリダクションコーチがたくさんいます。彼らは、英語を第二言語として話す人が母国語訛りを軽減し、聞き手が理解しやすい発音にするためのトレーニングを行っています。彼らが発信する情報は非常に奥が深く、この本は英語発音のプロフェッショナルたちが活動している世界に気付かせてくれた「ドア」のような存在でした。
発音練習は身体的な学習
この本は、視覚的な例えを使って英語学習者にも比較的わかりやすく書かれていると思いますが、正直に言えば、本には限界があります。発音練習は身体的な動きであり、体感を通して初めて「理解」できるものだからです。例えるなら、バスケットボールが上手になりたい人が、本を読んで研究した後に実際の練習に真剣に取り組む必要があるのと同じです。
その際、ちょっとした動きの誤差や歪みを指摘してもらい調整を行うことで、進歩のスピードが格段に上がるでしょう。同様に、アクセントリダクションや発音矯正のコーチングを受けることで、自分の発声の癖や目標となる音(ターゲットサウンド)とのズレを理解することには非常に大きな価値があります。
最後に
この本に興味を持った方は、ぜひ実際にエクササイズに取り組んでみてください。発音の基礎をしっかりと身につけることで、確かな自信を持って英語を話せるようになります。しかし、発音矯正だけではカバーしきれないリズムとイントネーションの重要性を理解するためには、さらなるトレーニングが必要です。
そこで、私はリズムとイントネーションに特化したアクセントトレーニングを提供しています。「聞く人を魅了できる英語発音講座」アクセントコーチングでは、発音の正確さだけでなく、自然なリズムとイントネーションを身につけることに重点を置いています。これにより、あなたの英語はより流暢で聞き取りやすくなり、日常会話やビジネスシーンでも自信を持って話すことができるようになります。
もし、発音やリズム、イントネーションについてさらに深く学びたいと感じた方は、アクセントトレーニングセッションにご参加ください。具体的な発音改善のサポートを通じて、自然で効果的な英語コミュニケーションを実現するお手伝いをしています。あなたと一緒に、英語のリズムとイントネーションの奥深さを探求できることを楽しみにしています。
英語発音アクセントコーチ 久米ひろみ
英語を使うプロフェッショナルのための発音コーチング
アメリカ英語イントネーションに特化
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